東京インサイダー >
市場データ
内藤尚志 2025年1月11日 0:25 JST
米消費者の長期インフレ期待は2008年以来の水準に上昇した。トランプ次期大統領が掲げる関税導入への懸念が背景にある。ミシガン大が発表した1月の調査から分かった。
短期のインフレ期待も上昇。その結果、消費者信頼感は低下した。
キーポイント
1月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は73.2
前月の74.0から低下
エコノミスト予想の中央値は74.0
1年先のインフレ期待は3.3%
前月の2.8%から0.5ポイント上昇
予想は2.8%
5-10年先のインフレ期待は3.3%-2008年以来の高水準
前月は3.0%
予想は3.0%
ミシガン大の消費者調査ディレクター、ジョアン・シュー氏は「消費者のほぼ3分の1が関税について自発的に言及した。この割合は昨年12月の24%、選挙前の2%未満から増えている」と指摘。「これらの消費者は総じて、関税引き上げは値上がりという形で消費者に転嫁されるとみている」と述べた。
インフレ期待はさまざまな層で上昇したが、とりわけ低所得層で顕著だった。さらに懸念すべき点として、高額商品を今購入することで将来の値上げを回避できるとの回答が22%に上った。これは前月と同様、1990年以来の高水準となる。
インフレを巡る不透明感はここ1年で大きく上昇しているが、1970年代の水準にはまだ達していない。
期待指数は70.2と、6カ月ぶりの低水準。回答者の半数が向こう1年に失業率が上昇すると予想したことが影響した。今月は共和党支持者と無党派層の間でとりわけ低下が目立った。収入見通しも下がった。
大統領選挙後に支持政党でセンチメントに差が出る傾向は今回も続いた。共和党支持者の全般的なセンチメントに関する指標は、トランプ氏の大統領選勝利を受けて34ポイント近く上昇。一方で、民主党支持者の指数は約25ポイント低下した。
現況指数は12月の75.1から77.9に上昇した。
統計の詳細は表をご覧ください。
10日の米株式相場は下落。雇用統計が強い内容となり、年内の利下げ観測が後退した。米国債利回りは上昇した。
S&P500種株価指数は年初来の上げを消し、昨年12月18日以来の大幅安となった。同日は連邦公開市場委員会(FOMC)の予測で2025年の利下げ回数が半減し、市場に動揺が走った。
高い借り入れコストや根強いインフレ、政治的な不透明感にもかかわらず、労働市場が昨年も持ちこたえたことを今回の統計は示した。2024年は労働需要が鈍化し、失業率は上昇したものの、雇用者数は通年で220万人増加した。伸びは23年の300万人を下回ったものの、19年の200万人を上回った。
クリントン元米大統領の政治顧問だったジェームズ・カービル(80)氏は「生まれ変わるなら債券市場になりたい。債券市場は人々を恐れさせるからだ」と語ったことがあった。
米国債市場は再び人々を恐れさせており、政治家も他の皆と同様に恐れるべきだ。
This site was created with the Nicepage